没見
一冊のノートが紡ぐ、利他の循環
テマヒマ代表・バイヤー(みそソムリエ)太田準
行き過ぎた資本主義や効率化・画一化に対しオルタナティブを探す動きや議論が昨今盛んだ。大阪府高槻市の路地裏にある、民藝と発酵をテーマにした古民家ショップ&カフェの「恩送りチケット」の事例を紹介したい。
この仕組みは、およそ四枚分の料金で五枚綴りのドリンクチケットを販売することから始まる。一枚分は言わばお店からのプレゼントだ。購入者は自身でお得に使ってもよいし、店内にあるノートに「子育て中の人へ」などと宛て先と手書きのメッセージを添えて貼り、未だ見ぬ誰かに贈ることもできる。お返事を書き残せば、受け取ったチケットでドリンクを楽しめる。
これまでに、送り主が「かつての自分」に宛てて書いた手紙が、今まさに悩む誰かの心に届き、涙する姿もあった。誰かの過去が、別の誰かの今を救う。リアルでは出会わない二人が、交換日記のようなノートの中で緩やかにつながる。主語の小さな物語が綴られ、「自分は一人ではない」という共感と安心を分かち合う。昨年四月に始めたこの取り組みの購入者は間もなく累計百名に達し、閲覧自由なノートも一冊目が終わろうとしている。
カフェはサードプレイス(第三の居場所)とも言われ、社会的属性を脱ぎ捨てて「何者」でもないことが許される時間だ。恩送りのノートでも、参加者は名を無くして手紙をしたためる。これはSNSの匿名性とは似て非なるものだ。遊び心を持った参加から思いがけず利他や善意が引き出され、温かい経済の循環が広がる。それはまるで手前味噌仕込みのようだ。 大豆と麹と塩と混ぜ合わせ、仕込んだ後は、目に見えない微生物の働きに委ねる。プレゼントをしてからお返事が届くまで半年以上かかることもざらだ。待てなくなっている現代人が、ゆったりとした時間の流れを取り戻す。時間を信じて待つというのもまさに発酵的な営みである。
同時期に始めた「哲学カフェ」も、自己紹介をせず属性を脱ぎ捨て、持ち寄った「問い」について対等に対話する場だ。ノートが善意を引き出すなら、哲学対話は思考を引き出す。かつて民藝運動が、西洋化や機械化のカウンターとして始まったように、民藝的、あるいは発酵的な考え方は、デジタル化が一層進み、コスパ・タイパ一辺倒の現代社会のモノサシになり得ると考える。この温かい経済の形が全国へ広がっていくことを願っている。
おはようございます。
暮らし、味わう。
民藝と発酵をモノサシに食を通して健やかな暮らしを提案する古民家セレクトショップ&カフェ テマヒマ プロデューサー,バイヤーの太田 準です。
冒頭の文章。テマヒマブログをいつも読んで下さってる皆さんなら、太田さんまたいつもと同じようなこと言うてはるでって感じでしょうか。それとも、いつもと文体が違うけどどうしはったん?って感じでしょうか。
実は、日本経済新聞の経済教室のオピニオン欄「私見卓見」に投書したものです。投稿から1ヵ月経ったので、テマヒマブログで公開します。忘れた頃に採用連絡とかきちゃったら即刻このブログ消します笑。まだ諦めてへんのかい笑。民藝運動の柳宗悦は雑誌「工藝」や「日本民藝館」というオウンドメディアだけでなく、新聞や雑誌で積極的に発信してましたもんね。
お隣茨木市にある海老フライ武藤さんのところにお邪魔した時のことを「変動」というタイトルのブログで書きましたが、その時、代表の武藤北斗さんが「投書」し(て採用され)た記事が店内に掲示されていて、その手があったか!と閃きました。Omoiyari TIcket/Omoiyari Noteを初めてから一年のタイミングの4月に、無料のWEBプレスリリースをしてみたものの、どこからも取材依頼が無かったというのもありました(意外と根に持つ?しつこい?笑)
日本経済新聞は、言わずとしれた超メジャー経済紙で、結婚した99年から購読しています。企業を離れ、個人事業主・自営業になった今も読んでいますが、日経の論調と自身の思考がズレていると感じることが多くなってきています。現状の資本主義、経済論壇のデュアルスタンダードとして、贈与的なもの、利他的ものを投げかけてみたい、民藝的な、発酵的なモノサシを投げかけてみたい、という想いがありました。テマヒマブログを読んでらっしゃる方ならお気づきかもしれませんが、僕自身の完全なオリジナルなどというものは無くて、この文章の言葉の端々に、例えばクルミドコーヒーの影山知明さん、発酵デザイナーの小倉ヒラクさん、政治学者の中島岳志さんや、若き民藝研究家の佐々風太さんの影響も垣間見れる気がします。
投稿した後、AIさんとこの投書文について、何度か対話してみました(投稿前ちゃうんかい!?笑。例の調子でAIさんは、素晴らしい論考で震えましたとか、きっと採用されます的な感じで褒めてくれるわけで(話半分で聞きつつ、でものせられたりしつつ)、不採用だとしたらどういう理由か聞きました。
①お店の宣伝と受け取られる可能性
筆者名以外には店の名前を入れていないのですが、具体的に書かないと伝われないし、具体的に書けば書くほどそのように取られてしまうかもしれず難しいところです。恩送りの仕組みによる宣伝効果/売上影響は殆どありませんが、それを殊更協調すると取り組みの意義を矮小化してしまうことにもなってしまいます。
②小さなお店の特別な美談として取られる可能性
ミクロな話でマクロ経済には影響がないとか、エッセーとしては美しいが経済論としてはどうか、といったこともAIさんは言っていました。そうなんです!テマヒマだけでは本当にとても小さなこと。テマヒマだけでしか出来ないことではなく、きっとどんなお店でも出来そうなことなので、他のお店でもやりませんか?広げていきませんか?という提案なのです。
日経の論調とは随分毛色が違うので、AIさんはだからこそ日経は取り上げるべきと寄り添ってくれるわけですが、それこそが不採用な理由だと冷静に分析しています。日経系のテレビ東京の番組「カンブリア宮殿」さんがリニューアルして少し前に木村石鹸さんが取り上げられたりしていたので、少し潮目が変わったかな?と一縷の望みを持ったりしていました。もしこの投稿が載っていたら日経の度量というか、それこそ潮目の変化だと思います。
っていうか、日経新聞に投書する自営業者ってね笑
投書は不採用になりましたが、日経さんは勿論、日経さんに限らう、冒頭の原稿をご覧になってピン!ときた方!、取材したい!というメディアの方も大歓迎です。お気軽にお問合せ下さい。
今日で8月も最終日。この後11時オープンで皆様のお越しをお待ちしております。ランチの11時半,12時のお時間はご予約で残り1席となっています。
それでは好いモノ、好いコト、好いトキをテマヒマで。
今日も好い一日を。
さて、現在、高島屋の催事「民藝展」の東京会期@日本橋高島屋、開催中ですが、いよいよ9/16(水)からは大阪会期@難波高島屋スタートです。9/18(金)の小倉ヒラクさんとのトークイベント「民藝と発酵~生きるためのモノサシ」どんな内容になるでしょうか?ドキドキワクワクです。
0コメント