時列

おはようございます。

高槻市にある、民藝の器、暮らしの道具、食
に関する古書のセレクトショップ、発酵食品
中心のカフェ、テマヒマ
プロデューサー、バイヤーの太田 準です。
季刊民族学という雑誌は初めて購入したので
すが、183号の特集・民藝 人とモノとが出会うとき、を興味深く読みました。特に、濱田
琢司(関西学院大学教授)さんによる「民藝にと
っての地方 地方文化としての民藝」という
論考、その前に掲載の濱田さんと吉田憲司さ
ん(国立民族学博物館長)の特別対談「民」へのまなざしー民藝と民俗学と民族学 がとても
面白かったです。琢司さんは昨年テマヒマに
ご家族でお立ち寄り下さいましたが、濱田
司のお孫さんであり、民藝をご研究されて
います。

日本民藝協会のwebサイトに民藝とは?とい
うことで、条件ぽく

1実用性
鑑賞するためにつくられたものではなく、なんらかの実用性を供えたものである。
2無銘性
特別な作家ではなく、無名の職人によってつくられたものである。
3複数性
民衆の要求に応えるために、数多くつくられたものである。
4廉価性
誰もが買い求められる程に値段が安いものである。
5労働性
くり返しの激しい労働によって得られる熟練した技術をともなうものである。
6地方性
それぞれの地域の暮らしに根ざした独自の色や形など、地方色が豊かである。
7分業性
数を多くつくるため、複数の人間による共同作業が必要である。
8伝統性
伝統という先人たちの技や知識の積み重ねによって守られている。
9他力性
個人の力というより、風土や自然の恵み、そして伝統の力など、目に見えない大きな力によって支えられているものである。

ということを掲げていて、高木崇雄さん(工藝
風向店主)も著書「わかりやすい民藝」の中で
○○だから民藝と捉えることに批判的な立場
から○○にも関わらずといった捉え方をすべ
きでは?と語っていましたが、濱田琢司さん
の論考は時系列を丁寧に追っていく中で、矛盾や批判がされやさい、例えば上記の廉価性
や無銘性についても、とても腑に落ちる説明
をされています。以下、本文より、抜粋、要
約してみました。

■廉価性
民藝とは、すでに使用されなくなりつつあっ
た近過去の日用品に、貴族的な美術品にも勝
る美があるのだ、という価値づけがなされ、
誕生したものだが、そのことにより下手物
と呼ばれていた安価で量産される日用品か
ら、都市部におけるちょっとだけ高価な嗜好
品へと価値転換された。つまり廉価性という
のは民藝となる前の状態の定義と言える。

■無銘性
柳たちの蒐集先は、生産の現場というよりも
使用する場も含めたそれらの「消費の場」で
あり、最初のタイミングでは作り手が生きて
いない時代のものに対して「無名の工人」と
いう言葉を使っていた。民藝運動が進展し、
現在進行形で作品を生み出している産地と関
わっていったり、濱田庄司らが民藝作家と呼
ばれるようになったりする中で出て来たズレ
を修正してこなかったと言える。

民藝が生まれた背景として、近代化の過程で
いったん否定されたものが再発見・再評価さ
れる流れがあり、「民」に注目する、民俗学
(柳田國男)、民具学(渋沢敬三)が民藝とほぼ同
時期に出現した。民藝と他との違いは、消え
ゆく日常に注目していこうという志向と同時
に芸術的な価値•美的なものとして文化的に
称揚していこうという志向があったこと。

それが、民藝運動の進展の中で、「貴族/民衆
」から「中央/地方」という対比軸の移行が
あり(この時系列での分析・評価は特に目から
鱗でした)、産地や生産者と結びつく運動とな
り、地方の手仕事を価値づけていくものとし
て確実に裾野を広げていった。
■地方性 ■伝統性
ここでも価値転換が起こり、地方の後進性を
守るべき伝統というかたちに捉え直すそうと
していた。

一方でそれはある種の現代性を手放し、民藝
の現代化を難しくした。柳宗悦の長男で工業
デザイナー、3代目日本民藝館館長が現代の
民藝として提示したのは「貴族/民衆」から
導かれる民藝の性質から発想された面があっ
たろうが、当時の民藝運動の関係者の間には
あまり受け入れなかった。

民藝運動の地方への展開に、各地の民藝協会
、各地の工芸店の役割も濱田さんは述べてい
て、この十数年の中で、比較的若い経営者に
よって運営される工芸店が地方に複数誕生し
ていることも指摘しています。
この論考や対談を読みながら、都市部にある
テマヒマのようなお店の役割、位置付けを考
えたりもしていました。それは地方と都市、
作り手と使い手を繋ぐことであり、きっと
「用」ということと「美」ということをより
意識した提案なのでは?と考えました。

対談の中で、民藝運動の他との違い、柳宗悦
の先駆性として、「展示はひとつの芸術だ、
創作だ」と捉えていたことに結構な分量を
割いていました。美術館•博物館の展示と物販
の陳列とは違うとは思いますが、お店での見
せ方・魅せ方について常に学び改善改良して
いきたいと改めて思いました。在庫量に伴っ
て陳列量が増えてるので、もう少しなんとか
見やすくしたいのですが。。。


テマヒマは昨日今日、火曜日水曜日で定休日
です。明日3/9(木)11時オープンで皆様のお
越しをお待ちしております。
それでは、今日も好い1日を!

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テマヒマ

テマヒマは、大阪府高槻市にある、 民藝の器、暮らしの道具、 食に関する書籍のセレクトショップ、 みそソムリエの作る発酵食品中心のカフェです。 食を通して暮らしの豊かさを提案しています。 「暮らし、味わう」 高槻市にお越しの際は、 築90年の古民家をリノベーションした 隠れ家的空間で、 器や暮らしの道具のお買い物、 ランチ、スイーツをお楽しみ下さい。 Since 2018.10.01