静謐
こんばんは。
高槻市にある、民藝の器、暮らしの道具、食
に関する古書のセレクトショップ、お味噌や
発酵食品中心のカフェ、テマヒマ
火曜日水曜日は定休日
プロデューサー,バイヤーの太田 準です。
女性の方を中心にニットの編地を連想することの多い島岡桂さんの縄文象嵌。生乾きの状態で組紐を転がし縄文模様をつけ、そこを化粧土で埋め、乾いたら表面を削りだす技法。編み目模様なのでニットみたい~というお客様の声はあながち間違いではなく、陶器という硬い素材なのに柔らかな表情で,どちらかと言えば寒色寄りの白でも温かみがあります。テマヒマのSNSもご覧頂いてる方ならお気づきかもしれませんが、一見相反する要素が同居するモノやコト、(もしかしたらヒトも?)惹かれるのかもしれません。縄文象嵌の技法で人間国宝になられらた祖父島岡達三の跡を桂さんが継承されています。
雑誌民藝最新号3月号のテーマは「民藝運動と縄文」。縄文を取り上げるのはなんと65年振りとのこと。興味深く読ませて頂きました。特に島岡桂さんとお母様の筆淑子さんの島岡達三と縄文象嵌についてのインタビュー記事はとても引き込まれる内容でした。
明日からメイン特集(或いはミニ個展)としてご紹介する前野直史さんが以前、轆轤の仕事は動的、型物は静的と表現されててなるほどうまい表現だなと思っていたのですが、それに倣うと縄文象嵌という技法は、縄目模様をつけるところは動的だけど、その後化粧土で埋めることによって静的になる不思議な存在だなと思っていました。
今回のインタビュー記事の中で、島岡達三は「縄文土器から模様の付け方はいただいたが、生命力があってバイタリティーあふれた縄文土器をイメージしたわけでは全くない。あんなの周りに置いておいたら、強さに負けて疲れてしまう。焼き物本来の美しさは静謐さにある。」という言葉が紹介されていて、象嵌にすることで動から静に転じるという見立てもあながち間違いでは無かったんだなと思いました。
栁宗理の「縄文土器の縄文はプリミティブな力強さがあり、粗野でたくましい美しさを持っている。しかし島岡さんの縄文は洗練された技術によって、ワビとかサビの日本独特な美に到着した」という評も同様のことかと思いますが、より鋭い眼差しがありますね。
島岡達三の師・濱田庄司が縄文象嵌について「模様を紐に託すことによって個人の上手下手を超えた非常に工芸的な効果が出る」と評価した話。縄文象嵌について島岡達三が「没個性のようで、結果としては個性的なものになっている」と答えたということも紹介されていました。前者は自力・他力の話にも繋がる気がしますし、後者は昨年富山で大福寺の太田住職から聞いた「個性はあるが自己主張しない」という民藝の特質にも繋がる気がします。
このインタビュー記事は、達三さんの弟子で孫の桂さんだからこそというところと、インタビュアーの佐々風太さんならでは文献を読み込んだ上での突っ込みによるところにより、とても深みがありました。これを読みつつまた島岡達三や孫の桂さんの縄文象嵌の作品を観るとより深まると思います。
という訳で雑誌民藝最新号と、島岡桂さんの縄文象嵌、是非お手に取ってご覧下さい。テマヒマにお越しのお客様は民藝好きの方以外にも、縄文好きの方もいらっしゃるのでそんな方にもおススメです。
テマヒマは昨日今日と火曜日水曜日で定休日でした。冒頭にご紹介したように明日からの前野直史ミニ個展に合わせての店内展示替えを行っていましたが整いました!明日11時オープンで皆様のお越しをお待ちしております。ランチのご予約はお一組のみでお席にかなり余裕がございます。ご予約無しでもお席ご案内出来るかと思います。
それでは明日も好いモノ、好いコト、好いトキをテマヒマで。
今日も一日お疲れさまでした!好い夜をお過ごし下さい。
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