僕伝

こんばんは。


民藝と発酵をモノサシに食を通して健やかな暮らしを提案する古民家セレクトショップ&カフェ テマヒマ プロデューサー,バイヤーの太田 準です。


小倉ヒラクさんによる新著「僕たちは伝統とどう生きるか」(講談社現代新書)販売開始日から2日遅れてしましたが、テマヒマでも明日よりお取り扱い開始となります。23日にそれをお目当てにお越し下さった方もいらっしゃって、出版社さんの手違いとは言え申し訳ございませんでした。バリューブックスさんでの先行販売が大変好評で、販売本番前に重版が決まるなど既に界隈では話題作となっています。テマヒマブログでも小出しに中身にあまり触れ過ぎずに周辺話題を絡めながら断続的にご紹介してきました。(ブログタイトル:隣合、血統、保守、直線、共生)


以前、帯に書かれている言葉から本の内容をご紹介しましたが、今日は目次から。


プロローグ あなたにとって、伝統とは何ですか?

第1章 大文字の伝統と小文字の伝統

第2章 「歴史」の誕生、さびしさの地平融合

第3章 発酵 見えないものとつむぐ伝統

第4章 民藝 つくることの伝承

第5章 鵜飼 異なる存在と、風土を旅する

エピローグ 向かい合うな、となり合え


目次をご覧になっただけでも、発酵デザイナーという肩書きでは捉えきれない広さを感じられるかと思いますが、深さもあり、ヒラクさん一流の硬軟交えた語り口で、読み進めていくうちにそれが繋がっていきます。「伝統」というビッグワードを、大文字の伝統と小文字の伝統という分けて捉え直すことで、整理されます。この二分法、「伝統」以外にも転用・応用出来ると思うのですが、ヒラクさんの論は、それを単なる二項対立では終わらせません。


テマヒマでは開店当初から「民藝」と「発酵」をモノサシにと掲げ続けています。民藝と発酵には共通することが多くて、そこから導かれる哲学や思想は今という時代を生きるモノサシになり得ると。例えばそれは、作為の無さだったり、他力だったり、多様性だったり、寛容さだったり。約100年前に生まれた言葉「民藝」の現代的な意味・意義を考えながら営んでいます。


小倉ヒラクさんの活動について、民藝運動との相似を僕は感じていて、それは(はじまりは)外からの新しい視点・価値付けであり、大きな流れに対するカウンター・アンチテーゼであり、様々なメディアを駆使して展開していき、(中の人となり)全国に志をともにするネットワークが生まれ、ブーム(流行)ではなくムーブメント(運動)となりつつあることなどなど。


ヒラクさんが民藝に興味を持つことになるのには必然性があったと思いますが、民藝についてもこの本では半ば外部的視点(この行き来する感覚がヒラクさんの真骨頂だと思います!)で取り上げています。「小文字の伝統」の再発見から始まった民藝が、オリジナルの純粋さへの執着と解釈に対する非寛容により「大文字」化したという批判(だけではダメですよ!と書いていますが)もあってフラットな姿勢。「直観」ということにより美意識が柳宗悦個人に依拠しがちだったことなど経緯については違った見方を僕はしていますが、権威化したことは事実だと思います。柳自身が「民藝という言葉に囚われてはいけない」と言っていたり、仏教美学に辿り着き、美醜について述べていたりもするので、柳自身も「大文字化」してしまう(しまった)ことへの危惧はあったと思います。


柳の言う「健やかさ」や「正しさ」についても、ナチスの有機農業の話も交えて、その危険性も書いてらっしゃいって、以前、ヒラクさんとのお話している中で「本物」という言葉についての話題(テマヒマブログでも以前少し触れました)があって、最近の自分にとっての指針の一つでもあるので納得感がありました。西洋と日本、美術と工藝、工業化と手仕事、都市と地方。カウンターとして生まれた民藝、朝鮮や沖縄、アイヌなど周縁、弱者への眼差しのある民藝も「権威」を持ってしまった後は違った伝わり方となってしまいます。


書き始めるととめどなくなってしまうのでこのへんで。

「僕たちは伝統とどう生きるか」は広く、深いだけでなく、この新著を基点に色々考えさせられる、そんな一冊です。全力でおススメしていきたいと思います。


ヒラクさんの初めての著書「発酵文化人類学」はテマヒマ開店前に読ませて頂き、発酵ということの奥深さ、可能性、民藝と発酵をテーマにしたお店を始めることへの後押しとなった一冊で、今回の「僕たちは伝統とどう生きるか」は「発酵文化人類学」同様、これから、版を重ね長く読み続けられることが想像されます。アーティスト・藤井風やドラマ「不適切にもほどがある!」を比喩に使ったりするのはそういう意味ではリスクになり得ますが、それ以上にヒラクさんの「今」まさに伝えなければ、という強い想い、危機感の現われに思います。SNSのハッシュタグ#ぼく伝 の「伝」は伝統であるとともに、「伝」えること、伝えなきゃという想いに思えてきます。


本書のきっかけにもなったヒラクさんのSNSの投稿が前書きにも掲載されています。

「今起こっているのは値上げの問題ではない。

 選択肢そのものがなくなり、自分たちの伝統を失う危機なのです」


小倉ヒラクさんのご著書はおそらくほとんど読んでいると思いますが、テマヒマで新刊書をお取り扱いさせて頂くのは、開店最初期の「発酵文化人類学」「日本発酵紀行」以来のことになります。ご存知のようにテマヒマでは新刊書は取次を通さず、出版社との直接取引のみでお取り扱いさせて頂いています。クルミドコーヒー・胡桃堂喫茶店店主の影山知明さん「続・ゆっくり いそげ」「大きなシステムと小さなファンタジー」などは結局何冊お届けしただろう?ぐらいな感じですが、今回のヒラクさんの新著「僕たちは伝統とどう生きるか」についても、(本屋ってこんなにおススメトークするもんやったっけ?)語って語って語って語って販売して参ります。


1クリックで即日Amazonから届く時代ですが、よろしければ、テマヒマ(或いは地元の個店さん)でお買い求め下さい。「小文字の伝統」が続くのも「小さなお店」が続くのも、皆さんの選択の積み重ねです。


明日も11時オープンで皆様のお越しをお待ちしております。


それでは明日も好いモノ、好いコト、好いトキをテマヒマで。

今日も一日お疲れ様でした。好い夜をお過ごし下さい。


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テマヒマ

テマヒマは、大阪府高槻市にある、 民藝の器、暮らしの道具、 食に関する古書のセレクトショップ、 みそソムリエの作る発酵食品中心のカフェです。 ヴィーガン対応、ロースイーツもあります。 食に関するワークショップも随時開催中! 築90年の古民家をリノベーションした 隠れ家的空間で、お買い物、ランチ、スイーツをお楽しみ下さい。 Since 2018.10.01 哲学カフェ、コンサルはじめました。