手業
おはようございます。
民藝と発酵をモノサシに
食を通して暮らしの豊かさを提案する
古民家セレクトショップ&カフェ テマヒマ
プロデューサー,バイヤーの太田 準です。
「民藝」という言葉が生まれて今年でちょうど百年。それまで「下手物」と呼ばれ見向きもされていなかった生活雑器などに対して、「民衆的工藝」略して「民藝」という新たな造語をあて、価値転換がはかられました。民衆的工藝ですので英訳は、fork art ではなくfork craft。今日のブログではそのcraft 「クラフト」について書いてみたいと思います。民衆「的」工藝と敢えて「的」と付けてることの意味について以前テマヒマブログで少し触れたことがありますが、folk/民衆ということについての現代的意味はまたいずれ深堀りしてみたい気もしますが、今日はクラフト/craftについて。
情報収集もAIを活用する時代に、そして視覚優位な時代に、最近音声メディアのSpotifyから情報を得ることが多いです。今回のヒントになったのはOUR CULTURE,OUR VIEWという番組の永田宙郷さんのゲスト回「クラフトこれまでとこれから」に拠ります。永田宙郷さんは、僕も2度ほど行ったことある「ててて見本市/ててて商談会」を立ち上げた人でもあります。
クラフトビール、クラフトフェア・・・クラフト〇〇という言葉が溢れる昨今ですが、クラフトウォッチャーでもある永田宙郷さんによると、日本国内では当初は素人的なモノ、未熟なモノ、趣味的なモノを指すことが多かったが、徐々に意味を変化させてきたとのこと。大きかったのは米・ポートランドからクラフトビールがライフスタイルと供にやってきたこと、3.11の影響では?と。デザインという言葉が氾濫し輪郭がぼやけた時期とクラフトという言葉が広がり始めた時期が近かったというのは興味深かったです。
クラフトという言葉の中にモノ作りの話だけでなく、
・大量生産でもなく1点ものでもない
・こだわり
・自分らしさの表現
・手仕事というだけでなくその背景も
・ローカルへの意識
・プロセスの共有(開かれている)
といった、態度や姿勢もあるのではというお話が出ていました。
特に、
・(コントロール出来ないものや「ゆらぎ」)受け入れる、委ねる
・あるもので何とかする
という姿勢や態度(アティチュード)については、
民藝が、現代において、暮らし方、生き方のモノサシ足り得るということでテマヒマで常日頃お話したり、書いたりしていることと共通していて、我が意を得たりという感じですが、民藝(folk craft)もcraftなので当然と言えば当然でしょうか。craft(工藝) とクラフトでは指すもの、イメージは違うと思いますが。
番組のアフタートーク的に、パーソナリティーの方が民藝とクラフトの関係について永田宙郷さんに尋ねる場面がありました。あくまで個人的な見解と前置きした上で、民藝が新語なのに対して、クラフトはもともとあった言葉で意味が変化してきたもの。民藝が「運動」だったのに対して、クラフトは運動のようなものにはならないかもしれないが「浸透」していく感じではないか?との回答。また民藝がどちらかと言えば「作り手」発信なのに対し、クラフトには「生活者」側からの要素が強いのでは?との発言がありました。
民藝についても、100年が経ち、回顧展的なものが続き、懐古的なものを感じることが多く、どちらかと言えば「運動」的要素は失われてるのでは?と思うことがあります。そういう意味では現代的な意味を問い続ける、変化していくことが重要だと考えますが、一方で声高に主張するよりも、静かにじんわり浸透していく方が現代的な気がします。また「モノ」としての捉えだけでなく「暮らし」という側面から捉えることが現代的なのかなぁと考えています。
この番組の中で、クラフトという言葉が「テロワール」と融合していくみたいな話がありました。ワインとかでよく使われる「テロワール」という言葉ですが、wikipediaから改めてその意味を引くと、
「テロワール(terroir)とは、もともとは「土地」を意味するフランス語terreから派生した言葉で、ワイン、コーヒー、茶などの品種における、生育地の地理、地勢、気候による特徴を指す語である。同じ地域の農地は土壌、気候、地形、農業技術が共通するため、作物にその土地特有の性格を与える。」
民藝においてよく言われる「土徳」って言葉。「テロワール」とほぼ同義で考えてもよいのでは?と気づいたのですが、いかがでしょうか?土徳の方がもう少し広義でしょうか?
「クラフト」というワードから、また別の論点で書いてみたいと思うのですが、それはまた別の機会に。
昨日から急に冷え込んで参りました。店内ストーブ(アラジン)を出したのですが、替え芯が届くのが明日なので、今日はエアコンのみですがどうでしょうか?
店内メインテーブルは本日より
「漆のお仕事と新春特集」です。
仁城逸景さんの新着をはじめ、玉山保男さん、平岡正弘さん、平松源さんの漆のお仕事。新年や午年、ちょっとクリスマスをイメージした器が並びました。
是非お手に取ってご覧下さい。皆様のお越しをお待ちしております。
今日もこの後11時オープンです。
それでは好いモノ、好いコト、好いトキをテマヒマで。
今日も好い1日を!
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